運輸業・貨物輸送等 データ提示型 付加価値型 No.34
原価データと付加価値提案で、運賃改定を実現
非公開(貨物輸送等)
この事例のポイント
コスト上昇要因
エネルギー・光熱費・人件費・労務費
交渉手法
データ提示型・付加価値型
活用ツール・支援機関
労務費単価表・荷主ニーズ対応
定量的な成果
希望額の約60%達成
荷主ニーズ付加価値提案相互利益
当時の課題
- エネルギー価格の高騰や人件費上昇により収益性が悪化。
- 大手荷主からの資料要請を好機と捉え適正な運賃水準の実現と投資原資の確保に向けた取り組みを開始。
取組概要
- 原材料費や労務費のデータを収集し詳細な原価計算を実施。
- 特に今回の交渉では荷主側から過去に例がないほど細かな資料の提出を求められたため、実態を正確に反映した労務費単価表や見積書を新規に作成。
- 業界全体の価格改定動向を収集するとともに同業他社との意見交換を通じて取引先が属する業界・業種固有の状況把握にも努めた。
- 荷主側のニーズに応えることで付加価値の向上を図った。
成果概要
- 利益率の改善を実現することができた。
- 改定額は希望の約60%にとどまったが収益性は確実に向上。
- 詳細なデータに基づいた客観的な説明資料を整備し提示することの重要性を再認識。
副次効果
データ提示の重要性再認識
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
運輸業で荷主からの厳しい資料要請に直面している経営者に、特に読んでほしい事例です。「過去に例がないほど細かな資料の提出を求められた」という状況を、むしろ価格転嫁の機会として活かした点がこの事例の本質です。
通常、荷主から細かな資料提出を求められると、経営者は「値下げ圧力の前触れ」と受け取りがちです。しかしこの事業者は、詳細な原価データを求められたことを「適正運賃を示すための舞台が整った」と前向きに捉え、実態を正確に反映した労務費単価表と見積書を新たに作成しました。要求に応える中で、自社のコスト構造の「見える化」が完成したのです。
結果は希望額の約60%にとどまりましたが、「収益性は確実に向上した」とあります。これは重要な視点です。100%の要求が通らなかった交渉を「失敗」と見るか、「収益改善への第一歩」と見るか——後者の姿勢が、次の交渉への継続力を生みます。
この事例が示す構造的な教訓は、「詳細なデータに基づいた客観的な説明資料を整備し提示することの重要性」という言葉に凝縮されています。運賃交渉の場で感情論や関係性への訴えではなく、数字で語れる準備をしていた事業者だけが、次のステップへ進めます。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →