運輸業・貨物輸送等 データ提示型 制度活用型 No.33
理論武装で多重委託構造での交渉に成功
K社(貨物輸送等)
この事例のポイント
コスト上昇要因
エネルギー・光熱費・その他
交渉手法
データ提示型・制度活用型
活用ツール・支援機関
埼玉県伴走型支援・公的文書活用
定量的な成果
運賃30%値上げ(1社)
公的文書活用理論武装伴走型支援
当時の課題
- 運輸業界特有の多重委託構造と燃料費や部品代などのコスト上昇で収益が悪化。
- 廃業もよぎる中、大口取引先との価格交渉につまずき再挑戦することに。
取組概要
- 大口取引先に運賃の引き上げを相談してもゼロ回答だったことから、埼玉県の伴走型支援を受け論理的な根拠を構築して再交渉に臨んだ。
- 交渉に先立ち原材料価格の現状を説明する精緻な原価計算の資料を作成し事業継続可能な運賃を試算。
- 原価計算には燃料油・アドブルー・事務用品・タイヤ・セキュリティ保守料金などコストアップの要因となる項目を全て含め、仕入先からの値上げ通達書類もファイリングして根拠とした。
- 国土交通省や公正取引委員会から発出された公的文書を準備し値上げの緊急性が高い取引先から交渉を開始。
成果概要
- お取引先1社については2トン車運賃の値上げ30%を実現。
- もう1社については希望通りにはならなかったが配送ルートの全面的な見直しによりドライバーの拘束時間が減り生産性向上が実現。
副次効果
生産性向上
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
運輸業の多重委託構造の中で、価格交渉が一度ゼロ回答になった経験をお持ちの方に、ぜひ読んでほしい事例です。廃業も頭をよぎる状況から、伴走型支援を活用して再交渉に踏み切り、運賃30%値上げを実現しました。
この事例の転換点は「ゼロ回答を受けた後、支援機関を活用して理論武装し直した」ことです。最初の交渉で断られた場合、多くの経営者は諦めてしまいます。しかしこの事業者は、埼玉県の伴走型支援を受け、原価計算の資料を精緻に作り直し、国土交通省・公正取引委員会の公的文書を揃えて再挑戦しました。「感情的な訴え」から「論理的な証明」への転換が決定打でした。
驚くべきは、もう1社の荷主に対しては希望通りの運賃値上げが実現しなかったにもかかわらず、配送ルートの全面見直しによってドライバーの拘束時間が減り、生産性が向上したことです。価格転嫁は「金額を上げる」だけが解ではなく、「収益構造を改善する」という広い視野で交渉することで、別の形の成果を生み出せます。
「仕入先からの値上げ通達書類をファイリングして根拠にした」という記述は、日頃からの記録習慣の重要性を示しています。交渉の準備は、交渉の前日ではなく、コストが動き始めた瞬間から始まっています。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →