2024年問題を背景とした運賃改定交渉
非公開(貨物運送)
この事例のポイント
コスト上昇要因
人件費・労務費・エネルギー・光熱費
交渉手法
データ提示型・制度活用型
活用ツール・支援機関
国交省「標準的な運賃」告示
定量的な成果
転嫁率77.5%(業界平均)
当時の課題
- 2024年4月からの時間外労働の上限規制(2024年問題)により、ドライバーの労働時間短縮が必須に。
- 従来の運賃体系では事業継続が困難。
取組概要
- 時間外労働の上限規制に伴う人件費増加と稼働時間短縮を定量的に算出。
- 国土交通省が告示した「標準的な運賃」を交渉根拠として活用。
- 荷主に対し、法令遵守のために必要な運賃水準を客観的データとともに提示した。
成果概要
- 運輸業は2025年度調査で転嫁率77.5%と全業種中最高水準を達成。
- 「2024年問題」が荷主側の理解を促進する追い風となった。
副次効果
ドライバー処遇改善
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
運輸・物流業で、2024年4月からの時間外労働上限規制(2024年問題)を契機に運賃改定を検討している経営者に、特に読んでほしい事例です。業界全体で転嫁率77.5%という全業種最高水準を達成した背景には、「法令遵守」という荷主側が理解しやすい言語を活用した交渉があります。
この事例の最大の示唆は、「規制・法律の変化を、価格交渉の文脈に正確に翻訳する」という手法です。「2024年問題でドライバーの労働時間を短縮しなければならない」という社会的事実を、「だからこそ運賃を上げないと物流が維持できない」という経営課題に接続しました。「法令遵守のための価格改定」という文脈は、発注側にとっても社内説明がしやすい論拠です。
国土交通省が告示した「標準的な運賃」を根拠として活用した点も重要です。官公庁が設定した公的な基準値は、個社の要求に「社会的承認」を付与します。この基準値よりも低い運賃で取引している場合、それは「標準以下の取引」であるという客観的な指摘ができます。公的機関の数値を根拠に使うことで、交渉は個社対個社ではなく、業界標準対個社という構図になります。
「2024年問題が荷主側の理解を促進する追い風になった」という表現は、外部環境の変化を価格交渉の好機として捉える姿勢の重要性を示しています。規制変更や制度改正は、交渉のタイミングを選ぶ際の重要な判断材料です。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →