専門・技術サービス業・デザイン・建築 データ提示型 No.50

原価の可視化と先行交渉で価格と質の向上を実現

I社(デザイン・建築)

この事例のポイント

コスト上昇要因

その他・人件費・労務費

交渉手法

データ提示型

活用ツール・支援機関

原価計算・パートナーシップ構築宣言活用・先行交渉戦略

定量的な成果

デザイン単価+67%(3→5万円)/売上1.6倍

先行交渉戦略パートナーシップ宣言原価可視化

出典より

経済産業省 中小企業庁「業種別 価格交渉・価格転嫁 成功事例集」 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • インフレによる原価高騰の中、長年価格を据え置いてきたことで収益性が低下。
  • クライアント離れの不安を抱えつつも適正な価格設定への転換が急務。

取組概要

  • まず社内の課題を見直すことを決め詳細な原価計算に挑戦。
  • 例えばA4チラシ1案件に費やす時間を精緻に計測し1時間あたりの単価を算出。
  • さらに機器やソフトの導入費、会社の維持費なども按分して価格に上乗せし論理的で説得力のある価格設定を準備。
  • 価格交渉においては「パートナーシップ構築宣言」に積極的な大手企業を調べて最初の交渉相手に選び成功事例を作ることでその後の交渉への説得力を高める戦略を取った。

成果概要

  • A4チラシのデザイン単価は3万円から5万円へと引き上がり全体の売上が約1.6倍向上するなど財務状況が大きく改善。
  • 安値案件が減ったことで時間に余裕が生まれデザインの品質が向上するという好循環が実現。
  • 想定以上にお客様が離れなかったことも収穫。

副次効果

品質向上・好循環実現

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

デザイン・クリエイティブ業で、長年価格を据え置いてきたために原価との乖離が生じている経営者に、特に読んでほしい事例です。A4チラシのデザイン単価を3万円から5万円へと67%引き上げ、売上を1.6倍にした具体的な手法が記されています。

この事例の出発点として印象的なのは、「A4チラシ1案件に費やす時間を精緻に計測し、1時間あたりの単価を算出した」という原価計算の緻密さです。さらに、機器・ソフトの導入費や会社の維持費も按分して価格に上乗せするという徹底した計算が、「この価格には根拠がある」という自信につながりました。価格を上げる前に、「適正価格はいくらか」を計算し切ることが出発点です。

最初の交渉相手として「パートナーシップ構築宣言」に積極的な大手企業を選んだという戦略も秀逸です。値上げに理解を示しやすい企業から成功事例を作り、それを次の交渉での説得材料にする——成功のモメンタムを意図的に設計する発想が、交渉全体を前進させました。

「安値案件が減り、時間に余裕が生まれ、デザインの質が向上するという好循環が実現した」という成果は、価格転嫁が単なる収益改善に留まらないことを示しています。適正価格で受注できる体制を整えることが、仕事の質を守り、クリエイティブな余裕を生みます。「想定以上にお客様が離れなかった」という言葉は、多くの経営者が感じる恐れへの答えでもあります。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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