専門・技術サービス業・司法書士 データ提示型 事業転換型 No.49

収益源多様化と構造転換で従業員の処遇改善へ

非公開(司法書士)

この事例のポイント

コスト上昇要因

人件費・労務費

交渉手法

データ提示型・事業転換型

活用ツール・支援機関

労務費単価表・新規BtoB開拓・BtoC展開

収益多様化BtoC展開構造転換

出典より

経済産業省 中小企業庁「業種別 価格交渉・価格転嫁 成功事例集」 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 人件費高騰による収益性悪化と従業員の疲弊が深刻な経営課題でした。
  • 単純な価格転嫁は難しく従来の取引依存体質からの脱却と強固な収益基盤構築が必要。

取組概要

  • 従来の取引依存から脱却し強固な収益基盤を構築するため価格交渉に取り組んだ。
  • 交渉の正当性を裏付けるために労務費単価表を新規作成し見積書の形式も見直した。
  • 同時に「万一お取引先を失われた場合に備え別のお取引先を確保する」という戦略方針を立て新規BtoB取引先の開拓を推進。
  • さらに事業領域を拡大し広告・プロモーション強化やEC参入により個人顧客向けのBtoCサービスを展開。
  • 収益源の多様化を進めることで交渉決裂リスクを恐れない体制を構築。

成果概要

  • BtoB・BtoC両分野での価格転嫁が実現した結果、売上増加と従業員の賃上げを達成。
  • 特にBtoCサービスが新たな売上の柱として確立され新規販路・顧客の拡大により事業基盤が強化された。

副次効果

事業構造転換・BtoC柱確立

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

司法書士事務所など専門サービス業で、人件費の高騰により収益性が低下し、価格転嫁が難しいと感じている経営者に読んでほしい事例です。「万一取引先を失った場合に備え別の取引先を確保する」という収益源の多様化が、交渉力の根本になりました。

この事例の最も重要な示唆は、「交渉決裂リスクを恐れない体制を構築することが、交渉力そのもの」という逆説です。一つの取引先への依存度が高いほど、価格交渉の場で弱者になります。BtoCサービスの展開という「別の柱」を事前に作ることで、「この取引先を失ってもいい」という余裕が生まれ、適正価格を要求できるようになります。交渉力は交渉の場ではなく、普段の事業構造の中で醸成されます。

単純な価格転嫁が難しい専門サービス業において、事業領域を拡大することで収益源を分散させた点も学ぶべき姿勢です。従来の取引依存体質という「構造的な弱さ」を認識し、その弱さを解消するための中長期的な事業展開を実行しました。価格交渉は個別の戦術ですが、事業構造の改革は戦略です。

BtoC分野での新たな売上の柱が確立されたという成果は、価格転嫁を超えた経営変革の成果でもあります。コスト高騰という危機が、事業ポートフォリオを見直す契機になった——この事例はそのことを示しています。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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