建設業・建築・建具工事等 データ提示型 付加価値型 No.32
組織規模に基づく差別化とメーカー連携で価格転嫁
非公開(建築・建具工事等)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・人件費・労務費
交渉手法
データ提示型・付加価値型
活用ツール・支援機関
メーカー連携・組織力活用
定量的な成果
粗利率向上
組織力メーカー連携付加価値差別化
当時の課題
- 材料費や人件費の高騰により収益が悪化。
- 代理店として小規模な競合が多い中、自社の規模を活かした差別化戦略と適正な価格改定を同時に進める必要に迫られていた。
取組概要
- 原価計算を徹底し見積書の形式を全面的に見直し代替案や新商品の提案資料を整備。
- 自社が所属する業界の価格改定に関する動向を広く収集し同業他社との積極的な意見交換を通じて市場環境の把握に努めた。
- 仕入先であるメーカーからの値上げ通知を受けメーカーと連携しながら価格転嫁を実施。
- 2〜3名で運営される代理店が多い業界において10名以上の組織力を活かした手厚いフォローや専門性の高い提案を行うことで他社との差別化を図った。
成果概要
- 売上高は一時的に減少したものの全体の粗利率は向上したため賃上げを実施。
- 代理店ごとに売値が乖離しているという業界の課題も浮き彫りに。
- 業界全体で適正な利益を追求できる環境作りを進めていく方針。
副次効果
賃上げ・業界課題認識
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
建設業の代理店として、材料費・人件費の高騰に直面している経営者に特に読んでほしい事例です。同業他社が2〜3名で運営する中、10名以上という組織規模そのものを「付加価値」として転換した点が、この事例の核心です。
注目したいのは、価格転嫁の交渉戦略として「同業他社との意見交換」を積極的に行ったことです。競合と情報交換するという行為は一見リスクに思えますが、市場全体の価格水準を把握することで、自社の価格改定が「業界の現実」として説明できるようになります。個社の判断ではなく市場の動向として提示する——これが取引先の納得を引き出す鍵でした。
また、メーカーからの値上げ通知を「受け身の情報」ではなく「交渉の出発点」として活用した点も学ぶべき姿勢です。サプライチェーン上流の価格変動を即座に自社の交渉資料に組み込むことで、転嫁の正当性を「証明」できました。
売上が一時的に減少しても粗利率が向上すれば、賃上げを実現できる——この事例はそのことを数字で証明しています。売上高という「上の数字」ではなく、粗利率という「残る数字」を改善することが価格転嫁の本来の目的です。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →