卸売・小売業・食品 付加価値型 関係構築型 No.17
商品構成見直しと季節戦略でブランド牛適正価格へ
I社(精肉販売)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・人件費・労務費
交渉手法
付加価値型・関係構築型
活用ツール・支援機関
商品構成調整・季節戦略・新商品名活用
季節戦略商品構成段階的転嫁
当時の課題
- 飼料価格の倍増と人件費の上昇により月100万円規模のコスト増が発生。
- ブランド牛の品質を維持しながら固定された卸価格をいかに改定するかが大きな課題。
取組概要
- 商品構成の調整による実質的な価格転嫁を実施。
- 赤身の中でも内側の柔らかい部位を上位に配置し形の悪い部位を下のランクに移すことで価格を据え置きながら商品価値を調整。
- 中間層の価格帯にボリュームを集中させ顧客目線の単価調整を実施。
- 新商品名を用いて価格改定する方針へと転換し、顧客に急激な値上げ感を与えずに価格転嫁を実現。
- 卸先への対応では季節戦略を活用。
成果概要
- 顧客に急激な値上げ感を与えずに価格転嫁を実現。
- 飼料の国産化による原価低減も組み合わせ、無理なく収益性を改善。
副次効果
飼料国産化・ブランド価値維持
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
精肉・食品の卸売・小売業で、ブランド商品を扱いながら固定された卸価格の改定に踏み出せずにいる方に、読んでほしい事例です。
この事例のユニークな取り組みは、「価格を据え置きながら商品価値を調整する」という間接的な価格転嫁です。部位のランク配置を変えることで、実質的な単価を上げながら顧客に急激な値上げ感を与えない設計をした。価格の数字を変えずに価値の構成を変えるという発想が、顧客との摩擦を避けながら収益を改善しました。
飼料の国産化による原価低減との組み合わせが、収益改善をさらに確実なものにしています。値上げ交渉だけに頼らず、自社内でのコスト構造改善と組み合わせることで、転嫁率が低くても収益が改善する。「交渉で取り返す」と「自社で下げる」の両輪です。
ブランド価値を守ることが価格転嫁の土台になっています。品質を維持し続けることで、適正価格を求める正当性が生まれる。コスト削減のために品質を下げる選択が、長期的にブランド価値と価格決定権を損なうことを、この事例は反面として示しています。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →