適切な交渉準備による労務費価格転嫁
A社(製造業(プラスチック部品加工組立業))
この事例のポイント
コスト上昇要因
人件費・労務費・エネルギー・光熱費
交渉手法
データ提示型・制度活用型・関係構築型
活用ツール・支援機関
福島県よろず支援拠点
定量的な成果
労務費6%改善、3%賃上げ実現
当時の課題
- 直近2期営業赤字。
- 労務費の伸び率が最低賃金の伸び率を下回る状態が続く。
- 令和4年に初めて価格交渉し光熱費5%改善できたが、労務費12%改善は自助努力でカバーするよう言われた。
取組概要
- 賃上げの数値目標や取引価格の改善目標を設定。
- 下請法・独禁法関連の法令や国の支援施策を把握した上で再度労務費の価格交渉を実施。
- 発注側B社の財務状況を把握し、交渉内容が役員レベルまで上がるよう工夫。
成果概要
- 労務費分6%の改善を実現し、原資に3%賃上げを実現。
- 価格交渉を半年に一度に定例化する支援を継続中。
副次効果
適切な原価管理体制の整備・定期的な賃上げに向けた仕組み化
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
プラスチック部品加工・組立業で、光熱費の転嫁は一部実現できたが労務費の転嫁が認められない状況が続いている経営者に読んでほしい事例です。「発注側の財務状況を把握し、交渉内容が役員レベルに上がるよう工夫した」という戦略的アプローチが注目点です。
「交渉内容が役員レベルまで上がるよう工夫した」という表現は、交渉の「舞台設計」について言及しています。担当者レベルの交渉では、担当者に決裁権がなく「持ち帰って確認します」という返答で止まることがあります。最初から役員・経営者が判断できるレベルで話を設計することで、意思決定の速度と結果の質が変わります。
下請法・独禁法関連の法令把握が、再交渉の際の心理的支えになった点も重要です。前回(令和4年)に「自助努力でカバーするよう言われた」という経験は、法的根拠の理解なしには反論が難しいものです。しかし下請法における「買いたたきの禁止」などの規定を把握していれば、「この要求は法的に問題がある可能性がある」という認識を持って交渉に臨めます。
価格交渉の半年定例化という成果は、一時的な改定より価値があります。定例化によって、次のコスト上昇が発生した際にも「交渉の場」が既に確保されています。交渉を「都度の戦い」から「継続的な対話」に変えることが、長期的な取引関係の中での適正価格維持につながります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →