スイッチングコストを理解し、影響の少ない先から交渉
非公開(金属加工業(設立1957年・自動車関連部品等))
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・エネルギー・光熱費・人件費・労務費
交渉手法
データ提示型・制度活用型
活用ツール・支援機関
埼玉県伴走型支援・価格交渉支援ツール
定量的な成果
事業用電力33.1%UP対応
当時の課題
- 顧客の受注量減少で売上が2割減。
- 材料費・電気代は高騰しているが転嫁できず。
- 40年前から材料費のみの値上げで労務費は未反映。
取組概要
- 埼玉県の伴走型支援で原価計算を学び直し。
- 価格交渉支援ツールで各コストの推移を確認し原価データを準備。
- 労務費に有給分も入れるべきとの助言を受け、交渉資料を整備。
成果概要
- 価格交渉の流れやポイントを把握し、交渉を開始。
副次効果
原価計算スキルの向上・SWOT分析による自社理解
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
金属加工業で、材料費・電気代の高騰に加え、40年間労務費を価格に反映できていないという複合課題を抱えている経営者に、特に読んでほしい事例です。原価計算を「学び直す」ことから始めたアプローチが示唆に富んでいます。
「40年前から材料費のみの値上げで労務費は未反映」という状況は、金属加工業のみならず多くの下請製造業に共通する問題です。労務費は「かかっている当たり前のコスト」として意識されにくく、見積もりに適切に反映されてこなかった歴史があります。この「見えないコスト」を可視化することが、適正価格への第一歩です。
「有給分も労務費に含めるべき」という専門家のアドバイスは、多くの経営者が気づいていないポイントです。実際にかかっている人件費コストには、基本給だけでなく有給休暇・社会保険料負担・各種手当が含まれます。これらを正確に算入することで、真のコストが見えてきます。正確な原価計算なしに適正価格は語れません。
スイッチングコスト(顧客が他社に切り替える際のコスト)を理解して「影響の少ない先から交渉する」という戦略も、この事例の重要な示唆です。取引先が切り替えにくい案件、技術的に代替が難しい製品から交渉を始めることで、関係を維持しながら成功体験を積めます。交渉は勇気が必要ですが、リスクを管理しながら進める方法はあります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →