取引先300社への価格交渉で平均10%の転嫁を実現
K社(粘着テープの製造販売(埼玉県・従業員80名))
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費
交渉手法
データ提示型・関係構築型
活用ツール・支援機関
埼玉県・よろず支援拠点
定量的な成果
平均10%転嫁、300社交渉完了、基本給4%・賞与6%UP
当時の課題
- 原材料費の高騰に対し多数の取引先との交渉が必要。
- 「価格交渉は堂々としていい」という意識改革が課題。
取組概要
- 「価格転嫁は正当な権利」という方針のもと、取引先300社と順次交渉。
- 原材料の価格変動データを根拠資料として活用し、粘り強く交渉を継続。
成果概要
- 取引先300社との交渉に成功し平均10%の価格転嫁を実現。
副次効果
社内の価格交渉に対する意識改革・従業員の処遇改善
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
粘着テープ製造業など、取引先が多数で全社への価格交渉をどう進めるか課題を感じている経営者に、読んでほしい事例です。「価格交渉は正当な権利」という意識改革を全社で行い、300社との交渉を完了して平均10%の転嫁を実現した事例です。
この事例の最大の示唆は、「意識改革を先行させた」という順序です。まず経営者・営業担当者が「価格転嫁は正当な権利であり、堂々と交渉していい」という認識を持つことが、具体的な交渉行動の前提になります。「申し訳ない」「取引を失うかもしれない」という心理的負荷を軽減することなく、300社への交渉を実行することはできません。
取引先300社という数は大きな規模です。すべての取引先に同じアプローチで交渉する必要はなく、この事例でも「順次交渉」という言葉が使われています。優先順位を設定し、段階的に進めることで、一社への交渉から学んだことを次の交渉に活かす学習サイクルが生まれます。大規模な交渉は、計画的なプロセス設計が重要です。
平均10%の転嫁達成と基本給4%・賞与6%の引き上げという成果の因果関係が、この事例の最も説得力ある部分です。価格転嫁によって得られた収益増が、具体的な従業員の処遇改善につながりました。「価格転嫁は取引先を困らせる行為」という感覚を持つ経営者も多いですが、その資金が従業員の生活水準向上に使われることを示すことができれば、交渉の意義が明確になります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →