製造業・化学・機械・加工紙 データ提示型 制度活用型 No.5
経営者主導の「数字の見える化」で平均10%転嫁へ
K社(粘着テープ製造)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・エネルギー・光熱費
交渉手法
データ提示型・制度活用型
活用ツール・支援機関
月次試算表・県派遣専門家・取引先分類アクションプラン
定量的な成果
平均10%転嫁/基本給4%増/賞与6%増
トップ主導透明性300社分類戦略
当時の課題
- 多機能性フィルムや両面テープなどの開発・製造・販売に関わる原材料費やエネルギー価格の高騰により収益が圧迫され事業の継続性が脅かされる状況。
取組概要
- 会長が「社会全体でお金を回すためにも価格交渉は必要」との認識を持ち、経営者が「堂々と交渉しよう」と従業員に発信。
- 月次試算表を従業員に開示し、価格交渉の際には取引先にも試算表を開示。
- 県から派遣された専門家のサポートを受けて取引先300社を売上高や値上げ率の目標・実績などで分析し、4つのカテゴリに分けたアクションプランに基づく地道な交渉を推進。
成果概要
- 取引先約300社のほぼ全てに対応いただき、平均10%の価格転嫁を実現。
- 基本給4%増、賞与6%増の賃上げとして還元。
副次効果
従業員への賃上げ還元
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
製造業で取引先が約300社あり、全社への価格転嫁交渉をどう進めればいいか途方に暮れている方に、読んでほしい事例です。
この事例のポイントは、経営トップが「堂々と交渉しよう」と社内に発信したことです。価格交渉を経営者だけの仕事にせず、従業員全員が「なぜ必要か」を理解した状態で取り組んだ。月次試算表を従業員に開示し、現状の厳しさを共有することで、組織全体が同じ方向を向けました。
取引先約300社のほぼ全てで価格転嫁に応じてもらえたという結果は、準備の徹底と分類戦略の成果です。一社一社の状況を丁寧に把握し、優先順位をつけて交渉した。多数の取引先を抱える企業ほど、個別対応の丁寧さが全体成功率を左右します。
賃上げとして従業員に還元できたことで、価格転嫁の意義が社内に可視化されました。「会社のために値上げする」ではなく「みんなの給与のために交渉する」という文脈は、従業員のモチベーションにも直結します。価格転嫁を経営と労務の両面で捉えることが、組織として取り組む原動力になります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →