製造業・金属・非鉄金属 データ提示型 No.1
データに基づく交渉と毅然とした姿勢で利益率向上
K社(機械加工)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費
交渉手法
データ提示型
活用ツール・支援機関
原価表・作業時間データ
原価管理見積計算システム利益重視経営
当時の課題
- 原材料費の高騰が顕著になり、従来の価格設定や交渉方法では利益確保が困難に。
- 「売上ではなく利益」という明確な方針を打ち出し交渉に臨んだ。
取組概要
- 原材料費や人件費、電力料金などの経費を基に算出した「原価表」を作成。
- 材料カットや溶接といった各工程の作業時間を分単位で詳細に算出した「作業時間データ」を用意。
- この客観的なデータを交渉材料として提示し、社長自ら値上げ理由を丁寧に説明することで価格転嫁を実現。
- 5Sの実践や補助金を活用した設備更新も継続的に実施。
成果概要
- 複数回にわたる価格改定を実施でき、一定の利益率を下回らない設定の見積計算システムを構築。
- 一部取引先との関係は途絶えたが、売上の落ち込みもなく利益率は向上。
副次効果
利益重視の経営へ転換
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
製造業で原材料費の上昇が続き、価格転嫁に踏み出せずにいる方に、特に読んでほしい事例です。
この事例で最も重要なのは、交渉の場に立つ前に「自分のコスト構造を数字で把握していた」という点です。材料費・人件費・電力料金を工程別・分単位で算出した原価表があれば、「値上げしてほしい」というお願いではなく、「この価格では利益が出ない」という根拠ある主張ができます。感情論ではなく、数字が交渉の主語になる。
一部取引先との関係が途絶えながらも利益率が向上した結果も注目です。利益率の低い取引先を手放すことは怖く感じますが、経営資源を利益の出る取引先に集中させることで、むしろ経営が強化される。「売上より利益」という方針転換が、実際にどう機能するかを示しています。
見積計算システムの構築が、この事例の本質的な成果だと私は考えます。価格交渉で一度値上げできても、その後また原価が上がれば同じ問題に直面します。「採算ラインを下回る受注はしない仕組み」を作ることで、価格転嫁を一過性の対応ではなく、経営の構造として定着させる。これが持続的な利益確保の本道です。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →